来年のことを言うと鬼が笑ってくれるのだとしても、あえて今年の話をしましょう。
べつに鬼に嫌がらせをしているわけではなく。
一年を振り返ることは重要です。後悔は美徳の春と言いますし。
はい、@hachinohe さん主催の4コマオブザイヤー2011です。
今年は4コマ発売リストなどで ( 強 引 に ) 協力させて頂きました。
あ、いえ、すみません。押し付けました。八戸さんありがとうございます。
4コマオブザイヤー2011 - 素晴らしい日々
2010年のオブザイヤーは鈴城芹さん「くすりのマジョラム」でした。
4コマオブザイヤー2010 - 素晴らしい日々
その時の私のセレクトは、こんな感じでした。
@hachinohe 新時代ハーレム4コマ「スターマイン(1)」 珠玉の恋愛4コマ「三日月の蜜」 和菓子4コマ恋愛風味「わさんぼん(1)」 最終巻枠は濃厚4コマ「ふおんコネクト(4)」
— 花さん (@FlowerThief) 12月4, 2010
我ながら良いチョイスです。
去年は半ば脊髄反射的にピン!と来た作品を挙げていましたが、
今年はじっくりじっくり迷いに迷って選択致しました。
せっかく4コマ発売リストとか作ったことですしね。
せっかくじっくり考えこねくり回したので、こうして記事というカタチにしてみようと思った次第です。
では、さっそく私が選ぶ4コマ オブ ザ イヤー 2011行きましょう!
新刊部門
2011年は実に115冊が新刊第一巻。
2011年に発売された4コマ単行本およそ300冊中、1/3が新たに紡がれ編まれ描かれ、世に出た作品になるのです。
凄い年です。去年はどうだったか調べていないですケド!
■黒渕かしこさん「墨色えれくとろ」
ゆるめ書道4コマ。
何を書くにも筆を使ってしまう愛里と、母性溢れるハーフのモニカ、元気娘で左利きな花の三人娘が墨色に染められる!!
麻雀雑誌と4コマ雑誌で有名な竹書房にありながら、
掲載誌は「ナマイキッ」という稀有な作品。
隠れた存在ではありますが、キャッチーなネタ運びで卒なく4コマしていて高評価。
あふれるポップな雰囲気が人気を博しての単行本化。
1巻で完結した作品ではありますが、ライフMOMOあたりで再開してくれないかなぁ、などと期待したりしてます。
ちなみに連載終了後、単行本発売記念としてライフMOMOにカラー掲載がありましたが、
その1話は単行本には収録されていません。是非とも続刊を!続編を!!
凄腕家政婦4コマ。
大きなお屋敷の草野家で、家政婦の椿さんは見た!
おもしろき こともなくとも おもしろく。
茶目っ気と外連味たっぷりの創意工夫で毎日がスリルとサスペンスでスリリングなパラダイス!
作品を読んだ際にも、楯山ヒロコさんとお話した際にも感じたことですが、
とにかくアイディアの引き出しが豊富で笑いのセンスが素晴らしいです。
すでに2巻まで出ており、しかも重版出来。凄いです。
ちなみに「でき」じゃなく「しゅったい」です。あ、どうでもいい?
よだれ垂らしまくりのパンまっしぐらパン屋4コマ。
美味しそうなパンを描き、美味しそうに食べる人たちを描き、パンを愛してやまないエピソードを描くことで
パンの素晴らしさを説く…だけではなく、
実は、宮原るりさん「みそララ」同様のお仕事4コマなんです。
ただし社会人としての秘訣ではなく、商売をする上での成功の秘訣を教えてくれます。
「目標を明確に持つ」「人を巻き込む」「人と夢を共有する」「適材適所」
「任せられるところは人に任せる」「身の丈にあった経営をする」「時には時間をお金で買う」などの教訓を、
きちんと物語の中で描いているので、とても説得力があります。
芳文社のタイム系4コマ作品としては珍しく、連載開始当初から1巻で完結することとなっていた作品であるため、
全体を通して見ても、しっかりステップアップが行われ、目標に邁進していることが判ります。
もちろん物語も各話のネタも、オチは外さないし季節ネタも忘れない。
樹るうさんお得意の小気味良いテンポと相まって、非常にレベルが高いものになっています。
こんなにもよだれを垂らすヒロインが登場する作品は、
後にも先にもただひとつであったという。
新刊部門ノミネート作品
口惜しくも泣く泣く下唇を噛みながら外すこととなった作品。
3つしか選べへんとか、八戸さんは鬼や!鬼やで!
和と洋。黒眼と碧眼。黒髪と金髪。ボケとツッ・・・あ、どっちも天然ボケキャラでした。
黒田bbさん「Aチャンネル」同様、キャラクタの可愛らしさがウリの一つですね。
異識さん「あっちこっち」に続いてアニメ化するきらら作品は、「きんいろモザイク」か、三上小又さん「ゆゆ式」か──。
ゲーム中で夫婦だけれど、女の子同士だけど、
彼女は彼女の夫であろうと、彼女は彼女の妻たろうと、
それも気持ちは複雑で、手を離さず離せず離れられず。
「日がな半日ゲーム部暮らし」とは打って変わってのこのドロドロとした雰囲気。
一見すると百合4コマかと思うところなのですが。
この作品を言葉で表すのは難しいです。
この重苦しくも痛ましい作品を、どう現せばよいのでしょう。
ただ言える事は、4コマ表現の一つのあり方を示す作品であることでしょう。
カフェ・サンフランシスコを営む時任一郎と、その双子の娘みおとつくし。
病気で母を亡くした家族ながら、健気に頑張るハートフル4コマ。
キャリアウーマン葉月さんや受験勉強と言い張り居座る浪人生宮嶋など、
常連さんを交えて暖かみのあるカフェ・サンフランシスコ。
家族の暖かみと人の暖かみを感じられる作品です。
いつも前向きだけど、ふと思い出す母マチコの思い出、姿。
そのマチコの友人である葉月さんの、一郎に対する気持ちは果たして。
母はなく なにはなくとも みをつくし みちびかるるは ふたごころならむや
歴史ネタ豊富な教師4コマ。
時にはワールドカップの話題をも歴史の坩堝に引きずり込むほど。
強力な個性を発する西名先生の授業を受ければ、漏れなく歴史オタクにもなれます。
名前のある生徒が登場しない職員室4コマとして、「教艦ASTRO」の蕃納葱さんからも
垂涎、じゃなく推薦のコメントが贈られたエピソードは有名ですね。
それでは、せーのッ
「こんな職員室、ずるい!!」
ニヒルでハードボイルドな刑事4コマ?
いいえ、シニカルでスクランブルエッグな刑事4コマです。
スクランブルエッグは語感だけで選んだ言葉です。意味などありません!
講談社から出ている「OL進化論」の課長さんが刑事だったら?というスピンオフ的な作品を、
「まんがライフセレクション秋月りすスペシャル」の描き下ろしやライフオリジナル本誌で少しずつ、少しずつ描き溜めた作品。
この作品が1冊にまとまったこと自体が凄いことなのです。
ざらさん「ふおんコネクト」を彷彿とさせる、ネタ分が濃厚な料理研究会4コマ。
その濃厚なネタと濃厚な画面、さらに早いテンポで捲し立てるそのギャグが、
読者を楽しませてくれます。
既刊部門
力強く連載を続ける作品。
フレッシュさを失わない作品であったり、
経験を積んだ強者たる手法を魅せる作品であったり。
続けることは経験を積むことです。
経験を積むと手法も変わります。
でも、変えないことも経験に裏打ちされた一つの手法です。
続けることは、それだけで力です。
アニメ化も決定した大人気猫4コマ。
ポヨ行方不明事件以降も変わらぬ猫ネタの披露っぷりが素晴らしいですね。
子ポヨの登場も想像以上の破壊力でした。あの生き物は卑怯だ・・・ッ!
猫たちだけでなく、ユカさんの子ポヨに対する奮闘っぷりにも、
萌さんと渡辺くんとの関係・・・は難しいとしても、
英くんとマキちゃんの関係にも目が離せません。
この作品の凄いところは数あれど、特筆したいのは
同じネタを同じ作品中に2度使ったことがないこと。(私が記憶している限りですが)
動物系4コマでは少なからず起こり得ることだとは思うのですが、
来年には10巻も発売されるという長期連載にあって、これは凄い。
ゲームで繋がる絡まるスパゲティ人間関係4コマ。
家族に仕事に友情に恋愛。
人との関わりを「ゲーム」という楔で繋ぎます。
でもやはり、読者の視点として、傍から見ていて楽しいのは恋愛関係ですよね。
いろんな組み合わせの人間関係をニヤニヤしながら眺めることが出来る作品がこの「家族ゲーム」。
人間、成長すると心とともに人間関係も変化します。
学年が一つあがる度、新しい舞台に進む度、新しい友人が出来る。
新たな出会いや再会は、さらに気持ちをも変化させる。
その変化し、延びた人間関係の糸の先は、ぐるっと廻って家族に繋がる──。
その絡まる人間関係の糸が編み上げる図柄は、果たしてどのようなものになるのでしょうか。
突然ですが、ケビン・ベーコン・ゲームって、ご存知でしょうか。
どの俳優からでも共演者を辿っていくことで6回以内にケビン・ベーコン氏に辿り着く、という法則のことです。
実はこの「家族ゲーム」のタイトルも、そういった「法則」の意味が含まれているのかもしれませんね。
いっつぁすもーるわーるど!
ズバ抜けたセンスの美術4コマ。
この作品の凄い点はたくさんあります。
その中でも個人的に特筆したいのは「構図」です。
いつも同じ幅、同じ高さの4コマというコマ割りの空間の中で、如何に魅せるか。
難しいことだと思います。
作者によって様々ですが、絵であったりセリフだったりで目をひく描き方をします。
きゆづきさとこさんはこの難題を、「構図」によって見事にこなしています。
4巻で言うと、デッサンされる側である石膏アグリッパさんの視線で描かれた回なんかは最たる例ですね。
漫画ではないのですが、乙一さん「夏と花火と私の死体」を連想します。
さらにその次の文房具の回も、ハサミでコマを切る。消しゴムでセリフを消す。など、
メタ視点という、いつもと違った構図を描いています。
いろんな意味で一線を画すエピソード。凄い。
骨董品店の回も、トモカネがその店を見つけた時の構図は、トモカネの視点ではなく、店の中からの視点。
これは扉絵であるから、というのもありますが、外からの描写ではなく、中から描くことで、展示されている商品を読者に見せることで
「なんのお店だろう?」と注意をひくことに成功しています。さらに伏線にもなります。
外からだと看板などの情報で即バレしてしまうパターンですね。それでもトモカネは判らなかったかもしれませんが。
この他にも和服回でのデザインもそうですし、そこかしこにデザイン、アートのアイディアが散りばめられています。
エピソードとしてアートデザインについて学ぶことができる以上に、
この作品自体がアートデザインの参考事例みたいなものですね。
既刊部門ノミネート作品
次世代ラブコメ4コマ。
スターマイン1巻は去年選ばせていただいたので、今回は選外。
それでもノミネートに至ったのは、落ちないクオリティとテンションが素敵だから。
腹筋ができなくたって、楽しければいいじゃない!
前屈ができなくたって、友達とお喋りできればいいじゃない!
ジムウェアを忘れたって、お嬢にブルマを借りればいいじゃない!
そんな、フィットネスクラブ4コマ。
ご存知ですか?
この作品、一度連載終了しているんですよ。
でも、掲載誌を移し連載再開する際に、過去掲載の5回分が小冊子として付録されたんです。
この人気の博し方。凄いです。
無印→DS→HIGH!と連載を続けてきた男爵校長シリーズも完結。
今回のオブザイヤーの範囲からは外れていますが、
最終巻ということもあり、この機会にと。
基本はギャグ4コマではあるのですが、
高校生であるメインのキャラクタたちの成長を大きく描いています。
最終巻となるHIGH!2巻の菜ヶ原さんの泣き顔と笑顔は、
無印に登場した頃の彼女の姿からは想像もできないですね。
続けてきたから、変化してきたからこその最終回。素敵です。
「ひときわ大きく輝く社員になってみせるぞ!」
熱血サラリーマン4コマではありません。
ボケにボケを重ねてボケ倒す、新時代4コマです。
このギャグは反則だッ!
毎回「お約束」の形でネタがある程度の順番となっている所謂「王道4コマ」の要素があるにも関わらず、
ボケもオチも、かつてないノリとテンションで本当に「新しい4コマ」と実感することが出来ます。
ÖYSTERさんは、「天津向の4コマトーク」でゲスト登場された回を拝聴したこともあって、
個人的に推したい作者さんです。「笹かまだしね」
今年は樹るうさん大躍進の年です。
ポヨのアニメ化もそうですが、今年2011年は単行本が4コマ作品で6冊。
猫エッセイ作品と合わせると7冊単行本が出ています。
重野なおきさんを超えていますね。
いや、もうどれを入れるかで迷う迷う。
樹るうさん幻の作品がついに単行本化!仙人妖怪美女変態が入り乱れる中国ファンタジー4コマ。
作者の作品中、最もカオスで抱腹絶倒必死。
「出たとこファンタジー」からの流れを汲むストーリー4コマで、
小気味良いテンポと漫画的かつ判りやすい表現などは流石の樹るうさんテイスト。
コアマガジン社の成年向け雑誌で連載していたこの4コマ作品を、
全3巻として発売した竹書房は素晴らしい仕事をしたと褒め称えるべきです。
敏腕大和撫子の家族愛4コマ。
一癖ある父娘2人暮らしのドタバタファミリー4コマが、
父の網目をくぐり抜けて逢瀬を重ねる娘のイチャラブ恋愛4コマを経て、
父娘ともに過去のトラウマを乗り越えるストーリー4コマへと移り変わって行きます。
この一連の変化を、違和感なくそつなく連綿と紡ぐのは素敵ですね。
家族の素敵さにじんわりくる作品です。
〆
以上、私が選んだノミネート作品も含む、4コマオブザイヤー。
6冊書けば良いはずが、何故かこんなにもたくさんの本をレビューしていたという。
それは、今年も良い4コマ作品の多い素敵な1年だった。ということの証左なのでしょう。
来年も、1月から早速「わさんぼん」2巻や「棺担ぎのクロ〜懐中旅話〜」3巻といった
楽しみな作品が続々と発売されることですし、
「ポヨポヨ観察日記」や「リコーダーとランドセル」に「ゆるめいつ」、
「キルミーベイベー」や「あっちこっち」のアニメ化が控えています。
来年も楽しみですね。今から楽しみです!
あ、鬼が笑ろてはる。